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【開催レポート】「第三者承継実践セミナー」

 人口減少や少子高齢化による中小企業の後継者不在が問題となる中、親族・従業員以外の社外の第三者への事業承継(第三者承継)が注目されています。
 愛媛県では、第三者承継に焦点を当てた全3回のセミナーを開催しました。(総参加者数 148名)


<全3回セミナーの様子>

1.事業承継の概要説明(各回共通)

株式会社ライトライト 
江尻 竜也 氏

事業承継の重要性と意義についてポイントを説明いただきました。

1.大廃業時代の到来

 日本では2025年までに70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者が約245万人、そのうち約半数の127万人が後継者不在とされています。このままでは、2025年までに650万人の雇用と22兆円のGDPが失われる可能性があり、地域経済の衰退に直結する深刻な社会課題となっています。

2.黒字廃業の増加

 黒字経営で将来性があっても廃業する「黒字廃業」が廃業の約5割を占めています。
 また、60歳以上の経営者のうち、50%超が将来的な廃業を予定しており、そのうち約3割は後継者不在が主な理由となっています。

3.親族承継の減少

 少子化やビジネスの多様化により、親族承継が減少しています。
 現在では、「子どもがあとを継ぐ」が当然ではない社会となっています。

4.新しいソリューションの必要性

 M&A仲介会社の手数料が高額で、小規模事業者が対象にされにくい現状があります。
 事業承継は地域経済の維持と発展に不可欠であり、後継者不在の問題を解決するための新しいソリューションが求められている、と説明いただきました。

セミナーの様子

2.事業承継の基礎知識説明(各回共通)

株式会社ライトライト 
永山 悟 氏(事業承継士)

 第三者承継の全体像とポイントを説明いただきました。

1.事業承継の種類

 事業承継には、親族内承継、従業員承継、第三者承継(M&A)の3種類があるが、本セミナーでは第三者承継に焦点をあてた全体像を説明いただきました。

2.事業承継全体像

 事業承継を進める一連の流れの中で、重点事項や必要な準備書類、メリット・デメリットなど、事業承継士の目線でポイントを説明いただきました。

(事業承継の主な流れ)
①問題意識・支援機関への相談→②仲介者選定・契約締結→③承継方法検討→④価格検討→⑤マッチング開始→⑥継ぎ手選定・交渉1→⑦基本合意→⑧買収監査(デューデリジェンス)・交渉2→⑨最終契約・売買完了→⑩実際の引継ぎ(PMI)

セミナーの様子

3.ゲストとのトークセッション

 各回、事業承継経験者をゲストとしてお招きし、なぜ事業承継に至ったのか、事業承継にあたって苦労したこと、良かったこと、承継後の展開などについてお話しいただきました。

(第1回)たぬき本舗株式会社 
代表取締役 森 達正 氏

 愛媛で90年親しまれていた「たぬきまんじゅう」を絶やしてはいけないという使命感から、それまで経営されていた仕事やお店を辞めて、息子さんと一緒に承継されました。承継後は、設備の老朽化やコロナ禍に直面、技術が機械化できないことが判明するなど、様々な苦労がありました。
 行政や銀行のサポ-トを受けながら、3年前に息子さんである専務が商品パッケ-ジなどを一新したことで取引先が拡大し、売り上げを伸ばすことができた、という経験談をお話いただきました。

(第2回)卯之町バールOTO 
代表 藤川 朋宏 氏

 当時、空き店舗だった築100年以上の古民家に一目ぼれし、古民家の持ち主を説得して承継されました。地域おこし協力隊として活動していたこともあり、地元のために何かしたいという想いがありました。東京で飲食の経験があったことから、飲食店を地元で経営することは自然だったそうです。地域おこし協力隊だったことをきっかけに、西予市のガバメントクラウドファンディングに参加するとともに、店舗内装費などはふるさと納税を活用して資金調達が実現できました。承継後は、コロナ禍に直面するなど予期しない出来事もありましたが、経営は順調に進んでいる、というお話をいただきました。

(第3回)株式会社丹後 
代表取締役 丹後 博文 氏

 もともと保険代理店や不動産仲介業を営んでいた丹後氏。不動産のお客様としていらっしゃったのが、承継元のタオル工場の社長でした。廃業のため動産を売却したいという話を聞き、地域産業が衰退していくのは良くないという使命感から承継を決意。「やめた方がいい」とタオル工場の社長から言われたことにも本音で話してくれる男気を感じ、より決意を強くされたそうです。廃業に向けて準備をされていたこともあり、まさに売上ゼロの状態で承継したため大変な苦労がありました。苦労もあった中、技術と職人さんを引き継いだことが財産であったと強い言葉をいただき、一から立ち上げるよりも短い期間で軌道に乗せることができた、というお話をいただきました。

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